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カルチャー

鹿児島人が解説!
大河ドラマ『西郷どん』を100倍楽しく見るための鹿児島弁講座

写真提供:公益社団法人 鹿児島観光連盟

はじめまして。今回の記事を担当いたします、鹿児島県出身のミクロと申します。

さて、今年のNHK大河ドラマ『西郷どん』では、演出の一環として薩摩弁が使われています。
筆者は鹿児島出身なので特に意識せずに見ていましたが、ツイッターを見ると「薩摩弁が分からない」との声が多くありました。

そんな方へ向けて、劇中登場した薩摩弁(鹿児島弁)を解説していきたいと思います。

ドラマ全体の約半分が終わった今、耳が慣れてきた方もいらっしゃると思いますが、劇中では使われていない薩摩弁(鹿児島弁)や現在使われている鹿児島弁、鹿児島のあるあるなども紹介していきますので、ぜひ読んでみてください。

桜島の写真。美しいですね。さて、「薩摩弁(鹿児島弁)講座」まずは……

「おい」と「わい」

鹿児島弁の一人称、二人称ですね。
「おい」「俺」「わい」「お前」という意味で、現代でも使われている言葉です。

関西弁では「わい」が一人称なので、ややこしかったかも知れないですね。

ちなみに、劇中では「おいどん」と使われることもありますが、こちらは現代では使いません!
ときどき他県の方が「おいどんは~でごわす」と仰いますが、それは「拙者、~でござる」ぐらいの感覚ですのでご注意を。

どんどん行きましょう。

「チェスト」

終わりのナレーションで使われていますね。
英語では「胸」「棚」と言った意味ですが、鹿児島弁では気合を入れるときのかけ声や応援の言葉として使われます。

標準語で「それいけ!」「やぁー!」と言う感じです。
語源は諸説ありますが、示現流(じげんりゅう)剣術(※1)の心構え、「知恵を捨てよ(無心になって斬れ)」が変化したという説が有力なようです。

※1 示現流剣術……
江戸時代の薩摩藩を中心に広まった剣術。「初太刀で勝負を決めるつもりで斬りかかる」という特徴を持つ。「知恵を捨てよ」の心構えは「余計な雑念を捨て、ただ目の前の相手を斬ることに集中せよ」という教え。この剣術から派生したのが薬丸自顕流(やくまるじげんりゅう)。吉之助などの下級武士はこちらを習ったと言われている。

「~もす」

現代では聞きませんが、「です」「ます」の意味です。
聞いているとモスバーガーに行きたくなると話題でしたね。

現代の鹿児島弁にすると、例えば、「これは~ということ?」と確認された時等に、「あ、ですです~」と「です」は2回続けて言うことが多いです。身近にこの言い方をする方がいたら、もしかしたら鹿児島県民かも?

「たもんせ」「(くい)やんせ」の違い

どちらも「~してください」という意味ですが、「たもんせ」の「~もんせ」は当時武家の使う言葉で、一般の人々は使いませんでした。

では「(くい)やんせ」はどうかというと、こちらは「唐芋(からいも)標準語(※2)」という最近の方言です。
おそらく史実ではなく、キャラクターや役者、状況に合わせて、最近の方言をまぜて使っているのだと思います。

現代では「(くい)やんせ」のような唐芋標準語が主流で、「~もんせ」などは年配の方が使います。

※2 唐芋標準語……
意思疎通をしやすいように、鹿児島弁を無理やり標準語に近づけたもの。鹿児島弁のイントネーションや一部の単語を残して、その他を標準語に置き換えている。現代では公の場などでよく使われ、若い世代もこちらを使う場合が多い。

「~どん」「~さぁ」の違い

「~どん」は「~殿」、「~さぁ」は「~様、~さん」という意味です。
「~殿」と言うと硬い感じがしますが、これは親しみを込めた呼び方で、「~さぁ」は親しみよりも敬意を強く込めた呼び方です。

『西郷どん』というタイトルには、「人に好かれ、親しみやすい西郷さんを描きたい」との思いが込められているのかもしれません。

「んにゃんにゃ」

そうなんです。
劇中で時折使われる「んにゃんにゃ」は猫語ではなく、鹿児島弁なんです! 特に年配の方が使うイメージですね。

意味は「違う違う」「いやいや」「いいえ」といったものです。
筆者はそれなりに聞き覚えがあったので、ツイッターで「猫語」だとか「かわいい」などと言われているのを見て、カルチャーショックを受けました。

「やっせん」

「だめだ」「まだまだ」という意味です。

「やっせんぼ」は「だめな奴」という意味になります。
「ぼ」は「ぼう(坊)」の意味なので、特に子供や、子供っぽい行動を指して使われます。

「じゃっどん」

「しかし」「でも」という意味です。

「ん」を抜いて「じゃっど」と言うと、反対に肯定する意味になります。
「じゃっどが」と変化させると「本当か?」と聞き返したり、「言ったとおりだろ?」と確認する意味になります。

「きばいもんそ」

「きばる」と「~もす」の変化形ですね。

鹿児島弁の「きばる」は「頑張る」という意味で、「頑張ります」ということですね。

「おやっとさぁ」

意味は「お疲れ様」
鹿児島の誇るいい方言だと筆者は思っています。

力が程よく抜けるような、ほっこりした響きです。
以前仕事で疲れて帰ったときに、家族から「おやっとさぁ」と言ってもらって、心が安らいだのを覚えています。

身近な人が疲れていたら、この言葉をかけてみてはいかがでしょうか。
ちなみに「おやっとさぁ」という名前の焼酎もあります。鹿児島土産にどうぞ。

「ひったまがる」

驚く、腰を抜かす、というときに使います。「おったまげる」という言葉と同じ意味です。

「てげ」

「適当」という意味で、「てげじゃっど(適当なことしてるぞ)」と相手を叱るときに使うことが多いですが、「てげてげでよかよ(ほどほどでいいよ、適当で大丈夫)」と加減を示すときにも使います。

「薩摩隼人(さつまはやと)」

薩摩の男の子や武人を指して使います。
「薩摩の武士は隼(はやぶさ)のようにすばしっこい」という評価から、こう呼ばれるようになったとされています。

「薩摩に生まれたことに誇りを持て」「薩摩男子に恥じぬ男になれ」という願いを込めて呼ばれることが多いです。
また、「勇ましく、活発な人」「気持ちの良い好青年」を言い表すときにも使います。

写真提供:公益社団法人 鹿児島観光連盟

次は、鹿児島の魅力をより知ってもらうため、
その他の鹿児島弁や鹿児島あるあるを紹介していきます。

このツイートにあるように、薩摩弁(鹿児島弁)は他県の人にとって、理解するのがとても難しいです。

現代でも、訛りの強い人は外国人に間違われることもあります。例えば、筆者の恩師が東京に旅行したときに、街の人へ話しかけたところ、韓国人に間違われて「アニハセヨ?」と返されたそうです。

そんな外国語だと勘違いされることもある鹿児島弁を、他県の人にも理解してもらえるヒントになればいいな、と思います。

「だれる」

「疲れた」「だるい」「気分が萎えた」という場合に使います。

「ずんだれる」と使うことも多く、この場合は「だらしない」「(主に服装が)乱れている」の意味になります。

「なんかかる」

標準語で「寄りかかる」

鹿児島だけでなく、九州では使う地域が多いようです。

「からう」

標準語では「背負う」です。

ずっと「ランドセルからって行きなさいね~」と言われながら育ってきたので、他県の友人に通じなかったときは焦りました。

「がられる」

「叱られる」「怒られる」の意味です。

「先生にがられっど~」という風に使います。

「びんた」

意味は「平手打ち」……ではなく、鹿児島弁では「頭」です。

筆者は昔、この意味が分からずに「びんたに叩き込めよ」と言われて、「殴られるのかな?」と泣きそうになったことがあります。
由来はよく分かっていません。

鹿児島あるある

ここからは鹿児島あるあるを紹介します。

写真提供:公益社団法人 鹿児島観光連盟

「将来何になるの?」という質問に「公務員」と答えたくなる。

その理由は、この動画を見てもらうと早いと思います。

このCMのフレーズを小さいころから刷り込まれているため、「こうむいーん」と答えたくなってしまうのです。
CMの力って、怖いですね……。

「好きです」の後に「かすたどん」と付ける

こちらも動画をご覧ください。

「かすたどん」と言うお菓子のCMですが、このCMのせいで純情を弄ばれた少年少女が続出したとかなんとか……。
CMの力って(略)

「濃い」を「こゆい」と言う

よく「味が濃ゆい」「色が濃ゆい」と使います。他県でもなんとなくは通じている……のかな。

「掃く」を「はわく」と言ってしまう

「そこはわいといて~」「じゃ、床はわこっか」と使いますね。

なんでもかんでも「なおす」と言う

標準語では「傷を治す」「壊れた物を直す」と、主に二通りの意味で使いますが、鹿児島の人は「しまう」という行為も「なおす」と言います。

例としては「棚になおす」「出したものをなおす」などでしょうか。
気にも留めていませんでしたが、他県の人からすると、とても違和感があるかもしれませんね。

終わりに

いかがだったでしょうか?
登場人物の使う言葉を知ることで、もっと深くドラマを楽しめると思います。

鹿児島弁はおおらかで力強く、それを聞いて育った吉之助たちもまた、おおらかで力強い人物として描かれています。

吉之助の生涯には様々な困難が待ち受けますが、鹿児島弁のように歩んでいけることを筆者は願っています。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。

それでは皆様も、吉之助も、チェスト!

(文/ミクロ)

※記事内容はすべて公開日時点の情報となります。

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