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WEBスクールに通っていたとき、同級生に「君のデザインは本当にシンプルだね、別の言い方をすると無機質」と指摘されたことがあります。それ以来、単なるシンプルではなく、もっと豊かなシンプルデザインを追究しています。
そんなシンプルデザインマニアの筆者が学ぶのに最適な展覧会『オランダのモダン・デザイン』を観覧してきましたので、そのレポートをお届けします。
「デザインはシンプルであることが一番大事。
完璧であるだけでなく、できるだけシンプルを心がける。
そうすれば見る人がいっぱい想像できるのです。
これがわたしの哲学。」
ディック・ブルーナ
(出典: 『ディック・ブルーナのデザイン(とんぼの本)』、芸術新潮編集部)
「ミッフィー」の絵本シリーズで知られる作家ディック・ブルーナは、「シンプルなものこそが豊かなものを紡ぎ出す」という哲学を持って制作していました。
絵本といえば写実的な絵が多かった1950年代(参照: Wikipedia ディック・ブルーナ「ナインチェ誕生」の項)。「ミッフィー」が生を受けたのはそんな時代のことでした。黒い枠線、鮮やかな原色、無彩色という「できるだけシンプル」な要素からなるデザインのルーツは、遡って1920年代にオランダ国内から興った「デ・ステイル」の芸術運動にあります。
『デ・ステイル』とはデザイナーのドースブルフが1917年に創刊したデザイン雑誌(1931年廃刊)、およびその活動グループを指します。英語で書くと「the Style」、日本語ならば「様式」といったところです。
デ・ステイルの理念は、グループの重要メンバーであった画家モンドリアンが提唱した「新造形主義」や、リーダーのドースブルフが主張した「要素主義」でした。
直角や直線、三原色などの単純な要素を用いた、普遍的な表現様式です。
代表的な作品としては、モンドリアンの絵画『コンポジション』シリーズや建築家リートフェルトの椅子『レッド・ブルー・チェア』、住宅『シュローダー邸』などが挙げられ、デ・ステイルの理念は絵画や芸術作品にとどまらず、デザイン・建築へと広がりを見せました。
1920年代。デ・ステイルの造形理念に共鳴し、自作の椅子をモンドリアンの絵画『コンポジション』のように着色してしまったのが、『レッド・ブルー・チェア』で知られる家具デザイナー、建築家のヘリット・トーマス・リートフェルト(1888−1964)。
1950年代。同じくデ・ステイルの理念に導かれ、絵本にその芸術性をなじませることに成功したのが、先述のディック・ブルーナ(1927−)。
1920年代に結核療養施設から生まれ、オランダの国民的玩具となって2006年まで製造が続いたADO※の玩具シリーズ(1922−2006)。それを監修したのは同施設の作業療法責任者であったデザイナーのコー・フェルズー(1901−1971)でした。彼もまた、リートフェルトをはじめとするオランダのデザインスタイルに影響を受けたひとり。
※ Arbeid door Onvolwaardigen(障がい者の仕事)
そんなデ・ステイルが結ぶ彼らの作品たちに焦点を当て、オランダのモダン・デザインの魅力を伝えてくれるのが東京オペラシティ アートギャラリーで開催している『オランダのモダン・デザイン』展です。
素材違い、着色違いの数種類のアームチェアのほか、食器棚やテーブルなど、いずれも100年近く前のリートフェルトの作品が並んでいます。デ・ステイルの理念が立体となって現れたような家具たちは、静的な印象を与えつつ、ある種の高揚感をもたらしてくれました。
リートフェルトがメインのエリアなのですが、ブルーナのポスターやADOの玩具などもミックスしながら展示してあり、見る人をワクワクさせる遊び心があって素敵です。
奥に見えるゾーンには、デ・ステイルの代表的建築である『シュローダー邸』の図面や建築ドローイング、模型、1920年代当時の内部写真などなど……貴重な展示物がたくさん。中でも3メートル以上はありそうな巨大パネル写真によるシュローダー邸全景展示は圧巻です!
日本でもおなじみの「ミッフィー」シリーズの絵本原画を始め、ペーパーバック「ブラック・ベア」シリーズのポスターや表紙デザインなど、なかなかお目にかかるチャンスのないブルーナの制作物の下書きから原画まで、惜し気も無く展示されています。
特に、ブルーナが用いる独自の制作手順を解説しているコーナーは、是非観てほしいところのひとつ。驚きの手法がつまびらかになると同時に、「なるほど1枚1枚に魂が込もっているわけだ」と納得した次第です。
結核療養サナトリウムの患者たちが製作したADOの玩具シリーズ。設計は作業療法責任者であったコー・フェルズー。作業療法という社会的価値に加え、子供の想像力を育む教育的価値や、明晰にものの本質を表したデザイン的価値・芸術的価値を併せ持った玩具です。
これらの玩具からもデ・ステイルの造形理念の影響がしっかり見てとれます。加えて、どこか人間のぬくもりを感じさせてくれます。
思わず触って遊びたくなる衝動に駆られましたが、当然ながら手を触れることは禁止されています。
2016/9/26 平凡社刊
監修・著: ライヤー・クラス 新見 隆
内容紹介
20世紀オランダ・デザインを代表する、リートフェルトとディック・ブルーナ、そして独創的な玩具シリーズADOを紹介する。
著者について
元アムステルダム市立美術館キュレーター、インダストリアル・デザイナー: ライヤー・クラス
大分県立美術館館長: 新見 隆
感想
本展に出展されているほとんどの作品が掲載されています。
写真やグラフィックがふんだんに使われているので、パラパラと眺めているだけでも楽しめます。また、ギャラリーを回ってもっと興味が増したという方のために、より深掘りした内容の読み物ページも充実しています。
私のようにほとんど予備知識がなくても、入門書として易しく面白い本だと感じられるのではないでしょうか。
ギャラリーを観覧してからこの本を立ち読みすると、きっと欲しくなると思います。ギャラリーショップにサンプルが用意されていますので是非手にとってみてください!
本展を見る以前は、リートフェルトの『レッド・ブルー・チェア』、デ・ステイルについてはモンドリアンの『コンポジション』くらいしか知識のなかった筆者。「『レッド・ブルー・チェア』が生で見られるぞ」と軽い気持ちでギャラリーに足を運んだのですが、ギャラリーをあとにする頃には、偉大な先人たちが作り上げたデザインの礎に圧倒され、すっかり感化されてしまいました。
時代もジャンルも異なる3者——必要な要素だけを残して極限までシンプルに仕上げたデザインの中に、ほんのりと人間らしい温かみが含まれているという、共通したアイデンティティが確かにありました。
「シンプルな要素で豊かなものを紡ぎ出す。」
読者の皆様も、ギャラリーでこの美学を心に焼き付けてみませんか。
なお、11月23日まで開催しています。
詳しくは 東京オペラシティ アートギャラリーWEBサイト 、または 展覧会特設WEBサイト でご確認ください。
(取材協力/東京オペラシティ アートギャラリー、取材・文/pino)
※記事内容はすべて公開日時点の情報となります。
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